『もうレシピ本はいらない』

マガジンハウス刊。
副題は、「人生を救う最強の食卓」。

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著者の稲垣えみ子さんは、50歳で朝日新聞を辞め、
フリーで文章を書いておられる。

東日本大震災を機に始めた、
冷蔵庫さえ持たない、徹底した節電ぶりで有名な方。

玄米を炊いて、おひつで保存。味噌汁。安くて栄養価の高い旬の野菜。
海苔、大根おろし、梅干し。干し野菜。ぬか漬け。

調味料は、塩、醤油、味噌、酢があればよい。甘みは食材に含まれて
いるもの以外は不要。身体によい上質の油で贅沢をする。

これらは、ガン患研のすすめる、がんを治す食事とほぼ重なり、
私の日々の食事とニアリーイコールである。

(あ、おひつは持っていないし、ぬか漬けも手軽な袋タイプで、
 夏だけしか作ったことがないけどね。)

つまりは稲垣さん、本能的に、身体にいい食事を
毎日毎日ご自分のために作り続けていることになる。

それらは地味で質素でワンパターンだけれど、毎食楽しみになる
ほど滋味にあふれ、豊か、そして安価かつ超時短なのである。

料理がシンプルになると、生きていくこともとても楽になる。
「稼がなきゃ」「いろいろ作らなきゃ」の呪縛からも解き放たれる。

「あなたは自分で好きなものを自分で作って食べることができる。
 (中略)食べることは人生の土台だ。ここがしっかりしていたら、
 どんな辛いことがあっても、誰かに裏切られても、一人ぼっちに
 なっても、だいたいは大丈夫なのである。」

「料理は自由への扉だ。
 だから自分で自分の人生を歩きたければ、誰もが料理をするべき
 なのである。(中略)自分で料理をする力を失ってはならない。
 それは自らの自由を投げ捨てる行為である。」

わずかな時間とわずかなお金、そして自分の頭と身体を使って、
自らの生命体を維持するための食事を作る。

それこそが自立。
「自分の力で食っていく」ことだと著者はいう。

もちろん、自分でできない人は、人にやってもらうことも
自立のうちだと思う。

料理は特別なことではなく、呼吸をするように、
ごく当たり前の行為なのである。

もともと料理好きの著者が作った、料理の写真のページも楽しい。
野菜って、本当に美しい。

私もそろそろ重い腰を上げて、ぬか床を育ててみようかな。

竹子先輩 ご退職パーティー

二つ目の職場の先輩方と、久しぶりにお会いすることができた。
芦屋にある、ちいこ先輩のご自宅にて。

出会ってかれこれ四半世紀。
阪神間にある職場で、阪神淡路大震災もともに味わった。

先輩方はみな、10歳近く年上。
ここ数年、定年退職のお祝いが続いている。

トップバッターは、ちいこ先輩。料理や裁縫、園芸、花文字と
いった趣味を楽しまれ、施設でのランチ作りのボランティアも。

ダイビングのライセンスを取得し、世界の海を潜っておられる。
マスターズの水泳大会でのメダルが、壁にズラリ。

たあこ先輩は、定年退職後、1年再任用に応じ、この春完全退職。

大好きなヴェネツィアを今年も訪れるべく、毎朝ウォーキングの後、
図書館に通い、イタリア語の勉強に励んでおられるとか。

そして、この春定年退職された竹子先輩。

学校と生徒たちが大好きだから、今年も週3日教壇に立たれ、
合間にご旅行、映画、読書などを楽しんでおられる。

優しく、あたたかく、知的な先輩たち話すのは、
とても幸せで楽しいひととき。

こんな若輩者を仲間に入れてくださって、ありがとうございます!
の思いでいっぱいになる。

早朝から深夜までの勤務を長年にわたって続け、心身をすり減らして
働いてこられたからこその、ゴールデンタイムを味わっておられる。

「今は毎日、楽しい気持ちで目覚める」
「毎朝のおつうじがよみがえった」と、先輩方。

私も、次郎の一挙手一投足にキリキリしていないで、
自分の魂を喜ばせる生活をしていきたい、と思う。

ご退職のお祝いは、3人で選んだ、レモンイエローのスカーフ。
とっても気に入っていただけたようで、よかった。

お料理上手なちいこ先輩。パーティーのメニューは、巻き寿司、
春野菜の天ぷら、筍の木の芽和え、ゆず風味のさっぱりなます、

ゴーヤとツナのサラダ、ベビーリーフとパプリカ・ミニトマトと
モッツアレラチーズ・チキンのサラダ、玉ねぎドレッシングなど。

たあこ先輩がいつも持ってきてくださる、
イタリアの美味しい赤ワインで乾杯。

竹子先輩持参のマンゴーゼリー、私持参の和菓子がデザート。
ちいこ先輩が美味しいコーヒーを入れてくださる。

ちいこ先輩が焼いてくれたケーキ、手作りの餃子、
ドライマンゴーやナツメヤシ、台湾のパイナップルケーキなど、

世界各国のお土産を抱えて帰宅したら、
ルール違反でスマホを取り上げられた次郎と夫が冷戦状態。

あーあ。

50歳で早々に退職した私だけれど、約10年後、
ささやかなゴールデンタイムを味わえたらいいな。

『さよなら、田中さん』

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三朝温泉に湯治中、小説を久しぶりに読んだ。小学館刊。
著者の鈴木るりかさんは、まだ中学2年生。

リアル、冷徹、かつユーモラス。
少年少女の微妙な心理描写に舌を巻く。卓越した筆力である。

格差社会、中でも子どもの格差をテーマにし、
謎めいた貧しい母子家庭を描きながら、深刻にならない。

自らの置かれている状況を俯瞰する目。明るい筆致。うーむ。
著者は前世までに何度も、人生の辛酸をなめてきたに違いない。

「元が取れる」「買えば高い」といった言葉が好きなお母さんが、
独自の哲学で、あっけらかんとたくましく生きる姿への敬意が、

感受性の高い主人公の田中さんを、堂々とした、
自己肯定感の高い子どもに育てている、と思う。

子どもと自分の命以外、失う物が何もない者の強さって、すごい。

「悲しい時は、とりあえずメシを食え。」
「そして、一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ。」とお母さん。

中学2年生の女の子に、泣かされ笑わされ、バシバシと
背中を叩かれ、「生きろ」と励まされたような気がした。

とても読みやすくておもしろい、おススメの一冊です!